概要
寒さが厳しい冬の時期、体が温まる鍋料理は冬の定番料理です。
手軽に作れる料理で一人でも家族や友人、知り合いと一緒に食べられるのも魅力的です。
地方や家庭によって作り方や具材が違うのも鍋料理の面白いところです。
鍋用の調味料の種類も増えており、普段とは違う味を楽しむこともできます。
今回は鍋料理についてご紹介します。
鍋料理の歴史・由来
17世紀の中頃、当時の日本の住居には台所にある竈(かまど)の他に囲炉裏がありました。
囲炉裏は照明や暖房を兼ねており、料理をすることもできました。
囲炉裏で鍋で煮炊きした料理を取り分けて食べることは、当時は日常的に行われていました。
18世紀後半になると囲炉裏ない住居が普及し、火鉢やコンロを使用する少人数用の鍋「小鍋仕立」が登場。
この頃から鍋から直接箸で何人かがつつくという現代のスタイルになりました。
しかし、当時はまだ竈が主流だった時代ということもあって浸透しませんでした。
明治に入ってからは牛鍋やちゃぶ台が普及し、その後はカセットコンロなどの登場も相まって鍋料理は家庭でさかんに鍋料理が食べられるようになりました。
水炊き
特徴
鍋料理の定番といえば「水炊き」です。
鍋に水を張り、鶏肉、野菜などの食材を煮込んで作ります。
主に九州地方と関西で食されており、昆布の出汁で煮て、ポン酢醤油につけて食べることが多いです。
残っただし汁にはうどんを入れたり、ご飯を入れて雑炊(おじや)にすることも。
レシピ・具材の例
- 白菜、水菜、えのき、しめじ、椎茸、もやし
- 大根、ネギ、ニンジン、豆腐、春菊、コンニャク、白滝、葛切り、うどん、油揚げ
- 鶏肉、豚肉、白身魚など
寄せ鍋
特徴
「寄せ鍋」はかつお、昆布、キノコ、貝類などでとった出汁に塩、醤油、酒、味噌などで味付けをします。
具材は、白菜やネギなどの野菜類、豆腐や練り物、魚介類や肉類、キノコ類など多種多様です。
一般的によく食べられている鍋料理で、家庭などによっては最後にラーメンを入れることあるようです。
レシピ・具材の例
- 白菜、水菜、えのき、しめじ、椎茸、もやし
- 大根、ネギ、ニンジン、豆腐、春菊、コンニャク、白滝、葛切り、うどん、油揚げ
- 鶏肉、豚肉、白身魚など
すき焼き(牛鍋)
特徴
浅い鉄鍋で焼いたり煮たりする「すき焼き」、すき焼きは関西で誕生した料理で、明治初期位までは関東などでは「牛鍋」と呼ばれていました。
薄切りにした牛肉を醤油と砂糖で味付け。
具材は主にネギ、ハクサイ、シュンギク、シイタケ、焼き豆腐、シラタキ、麩などをいれ、溶いた生卵で食べます。
牛肉を使う他に、「豚すき」「鳥すき(鶏すき)」「魚すき」「蟹すき」といったものがあります。
ネギのみで味噌仕立ての味付けで煮る・炒め煮にする調理法もあります。
レシピ・具材の例
- 白菜、えのき、しめじ、椎茸
- ネギ、春菊、コンニャク、豆腐、白滝、うどん、油揚げ
- 牛肉など
ちゃんこ鍋
特徴
鍋料理には色々な種類があり、力士が食べる「ちゃんこ鍋」は一般的にも知られています。
ちゃんこ鍋の“ちゃんこ”は、ちゃんこ番の力士が作る手料理からきています。
決まった作り方は無く、相撲部屋によってその作り方は様々です。
毎日同じちゃんこ鍋ではなく、水炊きや鶏ガラのスープを使ったソップ炊き、塩炊き、味噌炊きといった具合に飽きないように工夫をしています。
引退した力士が経営するちゃんこ鍋屋は寄せ鍋風になっており、相撲部屋では本来は魚と肉を一緒に入れないようです。
レシピ・具材の例
- 白菜、水菜、えのき、しめじ、椎茸、もやし
- 大根、ネギ、ニンジン、豆腐、春菊、コンニャク、白滝、葛切り、うどん、油揚げ
- 鶏肉、豚肉、牛肉、白身魚など
キムチ鍋
特徴
キムチ鍋(キムチチゲ)は朝鮮で親しまれている鍋料理です。
一般的にはキムチと肉類を炒め、肉などでとった出汁に塩・醤油・おろしニンニク・唐辛子粉などを加えて、などで味を調えていきます。
豚ばら肉との相性が良く、うま味成分のひとつイノシン酸を多く含む炒り子や塩辛などと一緒に豚肉を炒めると、より美味しくなります。
日本ではキムチと肉を炒めることが少なく、日本人に合わせて味噌を少量加えてコクを出しつつ、辛さを抑えたものが一般的です。
辛味が欲しい時はキムチを追加して調節するのも良いです。
レシピ・具材の例
- 白菜、水菜、えのき、しめじ、椎茸、もやし
- 大根、ネギ、豆腐、白滝、うどん、油揚げ
- 豚肉、キムチなど
もつ鍋
特徴
もつ鍋は“ホルモン鍋”とも呼ばれ、、牛や豚の小腸や大腸などの内臓肉といった所謂“もつ(ホルモン)”を使用した鍋です。
元々は福岡・博多でもつ肉とニラをアルミ鍋で醤油味に炊いたものでした。
やがて、ごま油で炒めた唐辛子ともつを調味料とネギ類を入れたすき焼き風の鍋がもつ鍋と呼ばれるようになりました。
近年では、鰹や昆布などでとった出汁に醤油や味噌で味付けしたものの中にもつと大量のニラ・キャベツ・ニンニクを入れて、煮込んで食べます。
好みで唐辛子(鷹の爪)入れるところもあるようです。
ニンニクはもつの臭みを取ってくれる効果があるので、大抵の場合は入れられています。
締めはちゃんぽんの麺を入れるのが定番となっています。
レシピ・具材の例
- 白菜、キャベツ、ニラ、ネギ、、玉ネギ、ニンニク、もやし
- 豆腐、ちゃんぽん麺、キムチ、唐辛子、ゴボウ
- 牛・豚のホルモンなど
きりたんぽ鍋
特徴
秋田といえばきりたんぽ鍋という位に有名な鍋料理。
ご飯を竹輪のように巻き付けて焼き、棒から外して食べやすくしたものを“きりたんぽ”と言い、それを鍋に入れて食べます。
出汁は鶏がらを入れて煮込んだものを使用します。
きりたんぽは自宅で作ることができ、温かいご飯をすりこぎなどで飯粒が半分位残る程度に潰し、それを割り箸や棒に1本ずつに握って巻きつけていきます。
これをオーブンで焼くのですが、その際に割り箸や棒がコゲないようにご飯以外の部分にはアルミホイルを巻きつけておきましょう。
うっすらつくまで焼けたら完成です。
きりたんぽは“たんぽ”を切ったもののことで、稽古用の槍につける綿を丸めて布で包んだ“たんぽ槍”からきています。
焼いたたんぽに味噌を塗ったみそつけたんぽも人気です。
レシピ・具材の例
- きりたんぽ、白菜、まいたけ、ゴボウ
- ネギ、豆腐、セリ、糸コンニャク
- 鶏肉など
アンコウ鍋
特徴
冬の東日本で広く食べられているアンコウ鍋。
茨木の郷土料理でアンコウは骨以外余すところが無い魚として知られています。
アンコウを吊るし、体内に水を入れて回転させながら捌く「吊るし切り」は冬の大洗で名物となっています。
それぞれの部分が異なる食感と味を楽しめ、アンコウ鍋には全て入っています。
中でも肝臓は“あん肝”と呼ばれ、ボイルしたものは珍味として食べられています。
水分の多いアンコウと野菜、そしてあん肝を煮込んだどぶ汁は漁師達が船の上で食べたとされており、お酒の濁酒(どぶろく)のように濁ることからどぶ汁と呼ばれています。
こちらの鍋料理は一般的にはスープや酒などを加えて作られています。
レシピ・具材の例
- 白菜、春菊、えのき、しめじ、椎茸、ニンジン
- ネギ、豆腐、白滝、うどん
- アンコウなど
石狩鍋
特徴
北海道の郷土料理のひとつ石狩鍋。
主に鮭を使用した味噌仕立ての鍋料理です。
隠し味として汁へ酒粕を加えたり、バターや牛乳などを使うこともあります。
最後に山椒を加えます。
北海道石狩市の石狩川が由来となっており、そこでは鮭が産卵のため遡上します。
地元の漁師が賄い料理として味噌汁の中に鮭のぶつ切りやアラ、野菜などを入れて食べていたものをベースに、川の近くにある元祖鮭鱒料理 割烹「金大亭」によって世に送り出されたと言われています。
タマネギ、キャベツといった鍋料理ではあまり使われていない食材を使用し、山椒を使うことで鮭の生臭さを抑えています。
レシピ・具材の例
- 白菜、キャベツ、ニンジン、春菊、えのき、しめじ、椎茸、ニンジン
- ネギ、豆腐、白滝、ジャガイモ
- 鮭など
ぼたん鍋
特徴
猪の赤い肉を使用したぼたん鍋。
主に猪が入手しやすい山間部で食べられており、古くは縄文時代からよく食べられていたイノシシは現在ても日本各地で食べられています。
薄切りにした猪肉を、牡丹の花に似せて皿の上に盛りつける事からぼたん鍋と呼ばれています。
割り下に大量の醤油と砂糖、八丁味噌を加えて濃厚な味にした江戸風なんてものもあります。
取り皿に生卵を入れたり、山椒を使ったりもします。
レシピ・具材の例
- 白菜、春菊、えのき、しめじ、椎茸、春菊
- ネギ、豆腐、白滝、うどん
- 猪肉など
珍しい変わった鍋料理
ミルク鍋
牛乳を使用した白いミルク鍋。
鶏がらスープをベースに牛乳を入れるのが主流です。
牛乳は味噌は相性も良く、コクが出ます。
〆にはご飯をとチーズを入れてリゾット風に。
レシピ・具材の例
- 白菜、ニンジン、えのき、しめじ、キャベツ、小松菜、ブロッコリー
- 長ネギ、玉ネギ、ニンジン、豆腐、ホウレンソウ、ニンニク
- 鶏肉、豚肉など
コーンポタージュ鍋
少し変わったところではコーンポタージュ鍋があります。
コンソメスープをベースにコーンポタージュを加え、牛乳を少量加えることできます。
トロトロのコーンポタージュは、身体を温める効果が高いと言われています。
また、コーンには疲労回復だけでなく、ホルモンのバランスを整える効果もあります。
レシピ・具材の例
- ジャガイモ、椎茸、エリンギ、ブロッコリー、スイートコーン
- 長ネギ、玉ネギ、ニンジン、豆腐、ホウレンソウ
- 鶏肉、豚肉、ウインナーなど
ミルフィーユ鍋
近年お手軽で美味しいと注目を集めているミルフィーユ鍋。
豚バラ肉と白菜を交互に挟み、ミルフィーユ状にした鍋で、少ない食材でも美味しく頂けます。
見た目もキレイで、白菜ではなく大根を使う人もいます。
使用する食材自体は少なくシンプルですが、きのこ類や長ねぎなどを入れても良いでしょう。
餃子の皮を間に挟めばもちもちとした食感も楽しめます。
更にレモンの輪切りを食べる1~2分前に入れるとサッパリとした風味になります。
レシピ・具材の例
- 白菜、大根、ニンジン、長ネギ、玉ネギ
- 大葉、餃子の皮、トマト、ニンニク、生姜
- 豆腐、豚肉など
タジン鍋
主にモロッコ・アルジェリア・チュニジアで食べられているタジン鍋。
とんがり帽子のような形をした蓋が特徴的な独特な鍋を使って作られています。
羊肉または鶏肉を香辛料をかけた野菜と煮込む鍋料理で、独特な蓋により、料理の香りが飛ぶのを防いで風味を逃さない蒸し焼き状態にします。
モロッコでは飲料水は非常に貴重だったこともあって、少量の水と食材の水分だけで調理できるタジン鍋は重宝されていました。
蓋の形のお陰で野菜を盛り上げても収めることができ、より多くの野菜を食べることができるのもメリットとなっています。
近年では電子レンジでも加熱が可能なタジンポットが登場したり、圧力鍋が使用されています。
レシピ・具材の例
- コンソメ、カレー粉、ジャガイモ、ニンジン、生姜
- 玉ネギ、いんげん、ニンニク、トマト
- 羊肉、鶏肉など
鍋ごとのおすすめ具材
大根
大根は鍋料理だけでなく味噌汁や煮物などにも合う野菜です。
大根はビタミンCにが豊富で、鉄分・リン・カルシウムを含んでおり、消化を助けるアスターゼも多く含んでいます。
根の部分は汁が染みやすく、鍋料理やおでん、煮物に最適な野菜です。
葉の部分も栄養価が高く、おひたし、みそ汁の具として使われます。
大根の葉は春の七草のスズシロ(清白)でもあります。
豆腐
豆腐は鍋料理だけでなく、味噌汁や冷奴など和食の定番食材です。
大抵の鍋料理に合う食材で、焼き豆腐なら煮崩れしにくいです。
また、豆腐は豆乳に“にがり”を加えて固めたもので、豆乳とほぼ同じ栄養価が含まれています。
豆腐に含まれる大豆サポニンは、体内で満腹中枢を刺激し、満腹感を得られます。
そのため、ダイエット食品としても人気があります。
更に、大豆サポニンは中性脂肪を減らす効果もあります。
便秘改善につながるオリゴ糖や、記憶力・集中力の向上、ボケ防止などにつながるレシチンとコリンも含まれています。
大豆は畑のお肉と言われるだけあって、豆腐はシンプルな見た目以上に栄養価が高い食材となっていま。
白菜
鍋料理の定番の野菜である白菜。
味にクセが無いので鍋料理に合います。
白菜は、大根、豆腐に並び「養生三宝」のひとつに数えられる野菜です。
白菜の大部分は水分ですが、ビタミンC、カリウム、マグネシウムや亜鉛などのミネラル類が豊富に含まれています。
それぞれ含まれている量は微量なものの、バランスが良く、食物繊維も豊富に含まれています。
ただし、白菜は加熱するとビタミンCが壊れてしまいます。
そのため、シャキシャキした状態がオススメです。
一通り食べた後はこれでシメよう!
雑炊
鍋料理での〆といえば雑炊です。
ご飯をただ入れるのではなく、 濃ければ少し水を加え、薄ければ塩か醤油少々で味を足しましょう。
鍋の出汁は多めに作っておき、ご飯はさっと水で洗って、ざるで水気を切っておきましょう。
そのまま入れてしまうと、汁に粘りが出過ぎてしまう原因になります。
魚の切れ端などの具はすくっておきましょう。
残った魚の骨が突然出てきた、なんてこともあります。
うどん・ラーメン
うどんやラーメンといった麺類も鍋料理での〆に最適です。
どちらも一度茹でて水を切ってから、冷水で絞めておきましょう。
そのまま鍋に投入するとしっかりと茹でることができず、硬い麺になってしまいます。
更に麺がほぐれず、ドロドロになる原因にもなります。
そのまま煮込むのであれば出汁は多めに作っておきましょう。
パスタ
洋風の鍋の締めにはうどんやラーメンよりもパスタが合います。
フライパンに移してオリーブオイル、にんにく、鷹のつめを入れて、鍋の残りスープと水を少量足して、乾麺の状態で湯でると残ったスープが麺に絡み合い美味しく頂けます。
ポイントは乾麺の状態で入れること。
茹でた状態でパスタを投入するとパスタにスープが絡みにくくなり、水分も増えるので濃度の調節が難しくなってしまいます。
乾麺の状態であれば余分な水分を含まず、パスタと絡みやすくなります。
お餅
鍋料理にお餅を入れるという人は少ないですが、鍋の旨味をたっぷり吸って柔らかくなったお餅はクセになる美味しさです。
しかし、お餅をそのままの状態で鍋に入れると溶けてしまったり、箸にベタベタとくっついてしまいます。
かといって餅巾着にするのも結構な手間です。
そんな時は餃子の皮でお餅を包んでから、鍋に入れましょう。
のり付けはしなくても大丈夫です。
箸がベタ付くこともなく、鍋でお餅を味わえるということでネットでも話題になりました。
チーズ
チーズは雑炊などに入れてリゾット風にするのが定番ですが、チーズ好きは鍋料理でもチーズだけで締めたいものです。
ですが、チーズはそのままの状態で鍋に入れると溶けてしまいます。
そこで、お餅の時のようにチーズを餃子の皮で包むと鍋に溶け出さず、トロトロの状態のチーズを楽しめます。
「お餅+チーズ+黒胡椒」の合わせ技もできます。
いつもとは少し変わった締めにしたい時にオススメです。
鍋料理はコストを抑えられる!?
鍋料理の魅力は身体が温まる以外に調理する手間が少ないのも魅力です。
調理する手間が少ないので結果的に光熱費を抑えることができます。
近年では度重なる災害により野菜は値上がりが続いているため、野菜を多く使用する鍋料理でもコストを抑えにくくなっています。
とはいえ、鍋料理はアレンジがしやすいので、もやしなどを中心にして節約レシピを考えるのも良いでしょう。