概要
海に囲まれた日本では日常的に魚を食すことが多く、一年を通して色々な魚が穫れます。
魚の種類によっては地方独特の呼び方もあり、旅行先で初めて食べたという魚料理も多いでしょう。
魚は季節ごと穫れる旬の魚も異なり、色々な調理方法が全国的に存在します。
魚にはカルシウムやDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれていることは有名ですが、魚の種類によってその他に含まれている栄養も微妙に異なります。
ここでは、そんな異なる栄養素と6月~8月が旬の魚をご紹介致します。
日本の魚食の歴史
島国ということもあ、日本では昔から魚介類が食べられていました。
今から1万年以上も前に始まった縄文時代には、既にに魚介類を獲って食べていたことが遺跡から発掘された貝塚などから判明しました。
弥生時代には、アユやコイ、サケといった川魚も食べられるようになり、より多くの種類の魚介類を食べるようになりました。
奈良時代には、アワビ、ナマコ、サザエといった乾燥品が献上されていましたが、庶民がこれらを食べることはほとんどありませんでした。
室町時代になると沿岸漁業が進み、江戸時代になってから寿司や天ぷらが出始めましたが、魚介類は傷むのが早く運搬が難しい時代だったこともあって、豪商や大名などお金のある一部の人間が好んで食べていました。
一方で産地では長期保存するための干物や漬物といった工夫がされ、現在でも食べられています。
第二次世界大戦後の高度経済成長の時代まで庶民は鮮度の良い魚介類を食べられる機会は少なく、冷蔵庫が一般家庭に普及するまでは質素な食事が基本で、魚介類は祝い事などに出てくる贅沢な素材でした。
6月~8月の旬の鮮魚
スズキ(鱸)
6月に穫れる代表的な魚としてはスズキ(鱸)があります。
いわゆる“出世魚”なので、成長と共に呼び名が変わり、ヒカリゴ、コッパ、セイゴ、フッコまたはハネと大きくなるに連れて呼び名も変わります。
そして、体長が60cmを超えるようなものをスズキと呼んでいます。
スズキは魚の中では珍しくビタミンAが豊富で、動脈硬化や心筋梗塞といった生活習慣病を予防できます。
白身魚なので、煮付け、塩焼き、揚げもの、刺し身など様々な調理に合います。
アジ(鯵)
夏といえば、アジ(鯵)も定番です。
一言にアジといっても種類が多く、マアジやムロアジ、メアジ、シマアジなどが日本では主に食されています。
長崎県では「ゴンアジ」や「関アジ」など、大分県では「岬(はな)アジ」が有名で、その地域でのみ穫れるアジも存在します。
アジは一年を通して穫れますが、大体5月~7月が旬と言われています。
アジはたんぱく質、脂肪、ビタミンB群、カルシウムやミネラルといった栄養素がバランスよく含まれています。
また、DHAやEPA(エイコサペンタエン酸)も豊富に含まれており、血液を浄化しサラサラにする働きや、ガン細胞が増えるのを抑える働きもすると言われています。
ウナギ(鰻)
初夏から夏にかけて食べられているウナギ(鰻)は人気が高く、土用の丑の日には定番の魚です。
ウナギの身を使用した鰻焼や鰻丼、ひつまぶしなどが定番料理となっています。
ビタミンAを始めとするビタミンが豊富に含まれており、ビタミンB1も含まれています。
ビタミンB1は炭水化物(糖質)をエネルギーに変えるのに必要な栄養素で、これが不足すると披露が溜まりやすくなったり、イライラや集中力の低下を招くと言われてます。
こういったことから夏バテ防止の食材としても親しまれているのです。
また、コラーゲンやパントテン酸も含まれています。
パントテン酸はコラーゲンを生成したり、新陳代謝を促進したり、髪のダメージを軽減する効果もあるため、ウナギは美容を気にする女性に嬉しい栄養素が揃っています。
キス(鱚)
白く小ぶりな魚のキス(鱚)はシロギスといわれ、後ろの背びれに黒い斑点があるアオギスがあります。
市場では主にシロギスが出回っており、大きいものであれば30cmほどになり、アオギスなら40cm程度の大きさになります。
昔は「キスゴ」と呼ばれていましたが、いつの頃からか「ゴ」が省かれて現在の「キス」という呼び方に変わったようです。
甘みのある白身には脂肪分が少なく、良質なたんぱく質を多く含んでいます。
人の生命活動に必要な必須アミノ酸も含んでおり、ダイエット食にも適している魚です。
イサキ(伊佐木/鶏魚)
関東以南の各地から九州全域にかけて生息する赤い魚のイサキ(伊佐木/鶏魚)。
若く小さいイサキは「瓜坊」と呼ばれています。
イサキは通年で市場に並んでいる魚ですが、産卵の時期が6月頃から9月頃で、産卵前の初夏にあたる5月頃から7月頃が旬の時期とされています。
産卵後のイサキは脂ののりが悪く、産卵前が最も美味しい魚です。
身がしっかりとしている魚なので、塩焼きやソテー、ムニエルなど色々な調理方法に合う魚です。
新鮮な旬のものであれば刺し身にすると美味しく食べられます。
成人病の予防に効果的な不飽和脂肪酸を含む脂質を多く含んでおり、ビタミンAや血圧を下げる効果のあるカリウムも多く含んでいます。
保存方法
魚を保存する場合、基本的なこととして血合いを落としてハラワタを抜いておきます。
血を残すと雑菌が繁殖してしまうので、竹ササラや歯ブラシも使って完全に血合いを落とします。
エラなど血が多い頭も切り落としてしまいましょう。
可能であれば薄皮も剥いておきます。
次に死んだ魚からは保水力を失い、細胞が死滅することで脂や水が出ます。
塩で締めることで、臭みの元となる体液のみを排出し、旨味を残す効果があります。
生鮮魚は三枚におろした状態で、穴開いたバットなどに並べて布巾を掛け、ラップはしないで寝かせます。
液の排出が始まったらキッチンペーパーや布巾で包んで、さらにラップで上から包みます。
包んだ布や紙が濡れたら取り替えないと、排出した液が身に戻ってしまうので交換しましょう。
その後、ジッパー付き保存バッグなどに入れて冷蔵する場合はチルド室、パーシャル室などで保存します。
冷凍する場合も霜ができる原因になるので、水気はしっかりと取っておきます。
美味しい食べ方
焼き魚
魚を食べる際の基本である「焼き魚」。
皮が網にくっつくのを防ぐには事前にグリルの網を強火で温めておき、その後に魚を焼くとくっつくことを防ぐことができます。
人によっては酢を網に薄く塗っておくという方法を取っています。
酢の味などは焼けば消えてしまうので気になりません。
魚焼き用のアルミホイルなども発売されているので、そういったものを使用しても良いでしょう。
ムニエル
白身魚料理の基本ともいえるのが「ムニエル」。
骨を抜いた白身魚の水気をキッチンペーパーなどでしっかりと取り、塩コショウで下味をつけます。
熱したフライパンにオリーブオイルとバターを入れ、小麦粉をまぶした魚を両面焼きます。
小麦粉は厚くならないように余分な小麦粉は落としておくと火も通りやすくなり、美味しくできます。
基本的なムニエルなのでこれをベースにアレンジしても良いでしょう。
まとめ
現在、日本では魚は一年を通して食べることができ、その時々の旬のものを食べるという楽しみがあります。
冷蔵庫の普及により食文化も大きく変化したことが魚を通してよく分かります。
海外ではあまり“旬”という考えがなく、季節に合わせて食材を楽しむというのは日本独自の発想なようです。
これも四季の変化表れやすい日本ならではの食文化といえます。
魚介類は傷むのが早いですが、正しい保存方法をしっておけば新鮮な状態で保存することができるので、魚を保存する際は是非実践しておきたいものです。