概要
冬のシーズンになると海岸地域でよく食べられている「蟹」。
地域や水域によって様々な蟹が生息しており、中でもズワイガニは冬の味覚の王様とも言われており、人気の高い食材です。
また、ズワイガニと温泉地を結びつけたツアーも人気です。
蟹は非常に種類が多く存在し、その数は5000種以上にもなります。
そのため、国や地域によっても食べられている蟹もいれば、スベスベマンジュウガニのように毒があるために、食べられていない蟹も存在します。
ここでは蟹について特集していきます。
「蟹」の歴史
現代では食べるのが当たり前となっている蟹。
蟹が食べられるようになった正確な時期は分かりませんが、日本に現存する最古の和歌集である「万葉集」では蟹の和歌が残っています。
その和歌によると、歌い手がこれから人に食べられる蟹を哀れむ内容となっており、当時は塩を付けて食べていたことが伺えます。
万葉集は7世紀後半から8世紀後半にかけて作られ、少なくとも西暦700年前後には蟹が既に食べられていたことが分かります。
江戸時代後期の北海道ではカニ漁が行われていた記録あり、塩漬けにして本州に送られていたようです。
明治時代になると当時盛んだったサケ、マス漁が衰退したことで、その代わりとしてタラバガニが人々に食べられるようになりました。
それまでは浜辺に棄てられていたほどで、需要はほとんどありませんでした。
また、それまで塩漬けにされていた蟹は、缶詰にされて、海外に輸出するようになりました。
名産地
鳥取県
蟹にも様々な種類が存在し、全国的にはズワイガニやタラバガニが有名です。
ズワイガニは関西を中心に日本海で穫れ、鳥取県では松葉ガニ、福井県では越前ガニ、京都では間人(たいざ)ガニなど色々な呼び方があります。
どれも同じズワイガニですが、育つ環境が微妙に異なるためか、丁寧に調理された松葉ガニと他のカニとでは風味なども異なります。
島根県、鳥取県では名産品として10年以上かけて成長したズワイガニの雄の松葉ガニをブランド蟹として売りだしています。
また、鳥取県境港市は、ベニズワイガニの漁獲水揚量が全国1位で約60%を占めていることでも有名で、全国的にも知られています。
松葉ガニは殻が固く、身がぎっしりと詰まっており、上品な甘みがあります。
刺し身や焼きガニ、茹でガニなど調理方法によって異なった味と旨味を楽しめます。
北海道
ズワイガニと並んで人気の高いタラバガニは、北海道のタラの漁場と同じ海域で多く穫れることから命名されました。
北海道やオホーツク海でよく穫れ、ズワイガニとは違った味と食感を楽しめます。
ズワイガニは身が繊維が太く食べごたえがあり、カニ味噌もあるにはありますが固まらず、洗い流さずに調理すると足の身に回って身が黒くなってしまいます。
刺し身にして食べることもありますが、基本的には塩茹でにしたり、焼きガニにして食べます。
味はあっさりとしており、大きければ大きいほど甘みが増します。
ちなみにタラバガニはヤドカリの仲間になります。
海外
シーズンになると海外からはロシア・アメリカ(主にアラスカ州)・カナダといった寒い気候の国からタラバガニが輸入されています。
国内で流通している多くはロシア産で、国産のタラバガニの流通量は禁漁期間や禁猟区の拡大により、年々減っています。
真っ赤な見た目からレッドキングと呼ばれており、まさに蟹の王様といった感じ。
また、青みがかった殻のアブラガニはタラバガニと非常に似ており、ブルーキングと呼ばれています。
アブラガニは見た目だけでなく、味の落ちたタラバガニに似ており、安価で販売されています。
そのため、アブラガニをタラバガニと偽って販売しているお店も存在するので注意が必要です。
アブラガニはタラバガニとほぼ同じ地域で穫れますが、タラバガニの漁期は7月~12月なのに対し、アブラガニの漁期は1月~6月となっており、タラバガニとは時期が異なります。
そのため、アブラガニも国内だけでなく海外からも入ってくることがあります。
保存方法
種類を問わず蟹は海産物なので、早めに食べないと傷んで食べられなくなります。
冷凍の茹でカニ(ボイルカニ)は解凍しなければ1~2ヶ月保存できます。
ですが、できるだけ早く食べてしまいましょう。
解凍した場合は、冷蔵保存でも2日以内に食べないと、鮮度が落ちて、身もスカスカになってしまいます。
解凍する場合は、冷蔵庫内でゆっくり自然解凍させてから調理します。
活きガニで届いた場合は保存するのが難しいので、早めにボイルにして食べるか、冷凍保存しましょう。
また、氷漬けにすることで蟹を仮死状態にしての保存も可能ですが、弱ったり死んだ状態で保存すると味も落ちてしまいます。
やむを得なく再冷凍や長期冷凍によって味が落ちた場合は、蟹を使用したカニチャーハンやカニクリームコロッケなどの料理に使用すると良いでしょう。
効果・効能
生活習慣病の予防に
蟹の甲羅にはタウリンが多く含まれています。
栄養ドリンクにも入っているタウリンは、善玉コレステールを維持しながら悪玉コレステールを降下させる働きがあり、動脈硬化の予防や悪玉コレステロールが要因となる様々な生活習慣病の予防にも期待できます。
また、タウリンは心不全の治療薬にも使われており、血中のカルシウム濃度を調節し、うっ血性の心不全を防ぐと言われています。
他にも胆汁の分泌を促進させ、肝臓の解毒機能を強化するので、お酒による二日酔いの症状緩和も期待できます。
目の疲れに
タウリンは目の疲れによる視力低下の防止にも効果があると言われています。
パソコンやスマートフォンを常日頃から積極的に使用する現代人とって眼精疲労はもはや当たり前で、悩まされている人も少なくありません。
また、小児の視神経の発達にもタウリンは必要な栄養素となっています。
目を行使することが多い時代だからこそ積極的にタウリンは摂取しておきたいものです。
美容にも
蟹の甲羅にはタウリンの他にもナイアシンが含まれています。
ナイアシンには血行を良くする効果があり、細胞の生まれ変わりをサポートします。
そのため、美肌効果にも期待できます。
また、ナイアシンは脂質、糖質、タンパク質を分解する酵素もサポートしています。
体を動かすエネルギーの約60%から70%がナイアシンによって生み出されているとされており、ナイアシンでエネルギーへの分解効率が上がればダイエットにも一役買ってくれます。
豊富なカルシウム
蟹類には117.0mgのカルシウムが含まれており、魚類が100g中65.7mgなのに対し、約2倍近くものカルシウムが蟹類には含まれています。
カルシウムは人体の骨や歯の生成や再生はもちろん、筋肉の収縮を円滑にしたり、血液の凝固作用など血液にも含まれています。
精神安定剤のような働きもするため、カルシウムは必須栄養素となっています。
美味しい食べ方
蟹鍋
蟹はタウリンやナイアシン、カルシウムなどのミネラル類が豊富な一方で、ビタミン類があまり含まれていません。
そのため、緑黄色野菜や柑橘類などで補う必要があります。
また、甲羅や殻に含まれているタウリンは煮ると染み出すので、蟹鍋はオススメのメニューです。
最後に雑炊にして食べると美味しく、効率良くタウリンを摂取することができます。
焼きガニ
蟹の身には吸虫の幼虫が寄生していることがあるので、加熱殺菌が必要になります。
そのため、焼きガニは蟹本来の味を楽しみながら加熱殺菌を行えます。
焼きガニ定番の酢や生姜は、蟹の生臭さを取り、殺菌作用もあります。
また、蟹は身体を冷やす「寒性」の性質を持つ食材なので、胃腸が冷えやすく弱い人や冷え性の人などは控えた方が良いとされています。
酢や生姜は「寒性」を抑制する作用があるので、身体が冷えやすい人でも食べやすくなります。
カニ玉
冷凍保存で、ある程度日にちが経ってしまった蟹はそのまま食べるには身がモソモソとしていたり、スカスカになっています。
かといって捨てるのももったいないです。
そんな時はカニ玉なんていかがでしょうか?
水、醤油、砂糖、酢、片栗粉を合わせておきます。
次に玉子、ほぐしたカニの身、塩コショウをよく混ぜてカニ玉の素とします。
そして、ごま油を引いたフライパンで白ネギ、椎茸を軽く炒めてカニ玉の素を一気に加えて、大きく混ぜながらふんわりと両面を焼いて器へ。
今度は予め合わせておいた水、醤油、砂糖、酢、片栗粉をフライパンで混ぜながらトロミを付け、先ほどのカニ玉へかけて完成。
カニ玉は固まらないように大きく混ぜて、半熟程度の固さでひっくり返します。
ご飯の上に乗せてカニ玉丼にしても良いでしょう。
カニクリームコロッケ
大人にも子供にも人気のカニクリームコロッケ。
蟹の持つ独特な匂いが苦手な人もこれなら食べられるという人もいます。
蟹は事前にほぐしておき、薄くスライスした玉ねぎを弱火の状態でバターで炒めます。
玉ねぎの色が透き通ってきたら火を止めて、小麦粉を入れて、粉っぽさがなくなるまで混ぜます。
火をつけて中火で牛乳を少しずつ注ぎ混ぜていき、とろみが付いてきたら、ほぐしておいた蟹と塩こしょうを入れます。
再び、弱火に戻して5分程度煮詰めます。
出来たタネはパッドに移して、あら熱を取り、ラップで包んで30分以上冷蔵庫で冷やします。
冷めたら、俵形にして分けて、小麦粉→溶き卵→パン粉の順で付けていきます。
後は中温で揚げて完成。
揚げている最中はあまりかまわず、1度ひっくり返す程度にしましょう。
多少手間はかかりますが、ちょっとした特別な日などにいかがでしょう?
まとめ
タウリンやカルシウムを多く含む蟹は、鍋にするのが定番となっています。
身体の冷える冬場は蟹鍋の暖かさが身体に染み渡り、栄養素も美味しくいただけるのが嬉しいですよね。
地域によって食べられている蟹も異なり、素揚げにしたり、味噌汁にしたりと色々な食べ方もあります。
産地によっては4月から5月まで蟹シーズンな地域もあり、実は一年中食べることができます。
上手な食べ方で効果的に食べたいですね。